作品名:なんちゃってソードレボリューション
作者:殻鎖希
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エリ「ところでさあ。ご主人様とミレアちゃんって〜、結局どっちが強いの〜?」
フィズ「俺に決まってるだろ」
ミレア「私に決まってるでしょう」
フィズ・ミレア『……って、あぁ?』
エリ「あ〜あ〜……なんかかち合っちゃったよ〜」
フィズ「ほぉ〜、言ったな、ミレア。俺の輝きの剣と風魔法の前じゃ、絶対手も足も出ないだろ」
ミレア「フィズの方こそ、私の弓と火魔法の腕を忘れたわけじゃないでしょう。言っときますけど、弓矢の殺傷力は剣に勝るとも劣らないものがあるのよ」
フィズ「矢なんざ全部斬り落としてやらあ」
ミレア「間抜けに剣を振り回してる隙に燃やしてあげるわ」
フィズ「何をっ!相棒だと思って聞いてりゃいい気になりやがって〜!」
ミレア「やる気?後でべそかいても知らないわよ?」
フィズ「上等だ!昔みたいに泣かせてやっから覚悟しやがれ!」
ミレア「いちいち子供の時の話を引き出さないでほしいわね……もう許さないから!」
エリ「あ〜あ。エリ、知〜らないっと」

フィズ「吹き荒べぇっ!(ビュッ!)」
ミレア「甘いわよ……駆け上れ!(ボウォッ!)」
フィズ「チッ……流石にやるな。《天駆け上る焔壁》を盾にして、俺の十八番を軽々と防ぎやがッた」
ミレア「フフフ……風と火の魔法は相性が良いのよ。貴方の放った風魔法のお陰で、私の炎も盛んに燃えているわ」
エリ「ね〜ね〜、ちょっとしつも〜ん。
 エリね〜、『ぞくせい』って、よく分からないの〜」
フィズ「……何だよ?緊張感のない奴だな」
エリ「だって〜、今回のテーマは属性について、なんだよ〜。ご主人様とミレアちゃんのどっちが強いのかじゃないんだよ〜?」
ミレア「そう言えばそうだったわね……本題をけろっと忘れてたわ」
フィズ「しょうがねえなぁ。
 属性が全部で幾つあるのかは知ってるのか?エリ」
エリ「それくらいは知ってるよ〜。七つでしょ〜。日月火水木金土!だよね〜」
ミレア「……それは曜日でしょう。正しくは、地水火風天魔在無の八属性よ」
エリ「そうなんだ〜。エリ、惜しい!」
フィズ「火と水しか合ってねえよ。
 いいか。属性ってのは、人間が生まれながらにして宿している性質の事だ。そして、人間の九〇%は地水火風の属性を宿していると言われている。こいつが所謂基本属性ってやつだな」
ミレア「私達が使う魔法も、この属性に基づいて発動させているの。
 フィズの属性は風だから、彼が使うのは風の魔法。私の属性は火だから、私が使うのは火の魔法と言うわけね」
フィズ「地水火風の使い手は自分の持つ属性の魔法しか使えないんだ。例えば、俺が地魔法を使おうとしても絶対に操る事が出来ないって事さ。ここまではいいか?」
エリ「ZZZ……」
フィズ・ミレア『って、いきなり寝るなあぁっ!』
エリ「むにゅ〜……うるさいなぁ。折角良い気持ちで寝てたのにぃ」
フィズ「人が説明してる最中に寝るな!そもそもお前がふった話題だろうが」
エリ「だって〜、ご主人様達の話、退屈なんだも〜ん」
ミレア「全く……
 そう言えば、エリちゃんって何属性なの?」
エリ「え〜と……エリは確か天だよ」
フィズ・ミレア『……天っ!?』
エリ「な、何よぉ……そんなに驚かなくっても良いじゃ〜ん」
フィズ「いや、驚くって普通」
ミレア「あのね、エリちゃん。天属性って凄い属性なのよ」
エリ「にゅ?何で?」
フィズ「地水火風を基本属性とするなら、天魔在無ってのは上位属性にあたるものなんだ。複数の属性魔法を使う事が出来たり、人智を越えたものの力を借りて、法を繰る事が出来たりする。そういう、とんでもない力を秘めた属性なんだ」
ミレア「私も、天属性の人には数える程しか会った事がないのよ。魔法使い達の中でも選ばれた存在ね」
エリ「わ〜、エリってエリートだ〜エリートだ〜。
 そう言えば、エリ、こないだ魔法で晴れの日に雨降らせたんだよ〜」
フィズ「魔法使って変えたんかっ!天気っ!」
ミレア「さらっと言っちゃったけど……それってメチャクチャ高度な技術が要るような気が……
 ところで、エリちゃん。どうして、雨を降らせたりしたの?」
エリ「うん。実はスクールに通ってる従弟のハワード君(九歳)が、運動会を中止にして欲しいって言うからねぇ〜……」
フィズ「類い希なる能力使って、運動嫌いの奴の片棒担いでんじゃねぇ!」
エリ「ご主人様、汗掻きすぎ〜。ムサいよ〜」
フィズ「お前のせいだっ!」
エリ「こんなムサい人放っておいてさぁ〜。
 ね〜ね〜、ミレアちゃん。残りの魔と在と無って言うのは、ど〜ゆ〜力なの?」
ミレア「そ……そうね。説明を再開するわ。
 地水火風が基本属性であるのに対して、天魔在無の属性は上位のものにあたるの。これらの属性を持つ人は、自分の属性以外の基本属性魔法を扱う事が出来たりするわ」
フィズ「き……気を取り直してだな……
 自分の属性以外の魔法を使う事は容易じゃない。修めたとしてせいぜい二属性が限界の筈なんだが……俺が今までに相見えた化け物共の中には幾つもの属性魔法を難なく操る輩もいやがった。世の中上には上がいるって話だな」
ミレア「基本属性と上位属性の両方を使われたんじゃ、流石に相当きついものがあるわね」
エリ「その、上位属性ってどんな力なの?」
ミレア「例えば、天であれば雷の力を借りた魔法を使用する事が出来るの。高度なものであれば、エリちゃんが言ってた様に天気を自在に変化させる事も可能であるかも知れないわね。
 ごく限られた使い手の中には、召喚という術を使う事の出来る人もいるわ」
フィズ「そして、天と正反対なのが魔の魔法だ。天が世の法を借りた最高位の呪であるのに対して、魔は自然界に絶対存在しない力にあたるんだ。
 自然界に絶対存在しない属性……故に俺達人間は、魔属性を身に宿す事が出来ないのさ」
エリ「へ?じゃあ、誰が持ってる属性なの〜?」
ミレア「魔物よ」
エリ「まもの〜?」
ミレア「さっき言ったでしょう。限られた天使いは、召喚を扱う事が出来るって。召喚というのは、魔法によって生物を創り出す術の事なの。そして、魔物と言うのは召喚によって創られた生物の総称よ」
フィズ「魔物は、自然界に存在する生物とは全く異なる存在だ。姿形は鳥獣の類と似通っていたとしてもな」
ミレア「アインの村でフィズが闘った人喰い花みたいに、基本属性を宿した魔物もいるわ。
 でも中には、彼ら特有の属性を持って生まれてくる物がいるの。その特有の属性と言うのが、魔属性なのよ」
フィズ「青紫のピエロ、シギの野郎が暗黒弾やら闇の刃やらを使ってやがったけど、あの力こそがまさに魔の力だな。ま、厳密に言えば奴は魔物じゃないんだが……創られたという意味では同じさ」
エリ「ややこしいなぁ……やっぱり、そろそろベッドに入りたくなってきたよ〜」
ミレア「もう少しだから辛抱しなさい。最後に話すのが在と無の属性についてよ」
エリ「あぁ〜、その二つも確か上位属性なんだよね〜……」
フィズ「その通り。この二つは、上位属性の中でもさらに特殊な属性だな。
 在は生きとし生けるものの生の力を造る事が出来る属性だ。その力は並の回復魔法とは比較にならないぜ。強力な在の力を浴びすぎると、逆に身体を破壊されちまう程のものらしいからな」
ミレア「無は在の逆で、死を司る力よ。人の寿命を縮めたり、生命活動を停止する事が出来る力なの」
エリ「おっかない力だね〜……どっちも」
フィズ「あぁ、恐ろしい力さ。
 在と無の力を操る事が出来るのは、この世にたった二人しかいない。伝説と謳われたあの兄弟のみが、持つ事を許された力なんだ」
エリ「……兄弟?」
ミレア「そう。マスターとシャドウマスターの兄弟よ。兄のマスターは在の力を、弟のシャドウマスターは無の力をその身に宿しているの」
エリ「凄いんだね〜……エリ、マスターって覗きが趣味のエロジジイだと思ってたよ〜」
ミレア「いや、その設定はオリジナルにはないから。今回だけのパロディ設定だから、ね。
 本当のマスターは、〈魔を極めし者〉とまで呼ばれた、伝説の人物なのよ」
フィズ「ま、尤もマスターも齢九〇以上。かつては天才と呼ばれた程の使い手だが、今となっちゃあ魔力も随分衰えている。かつての力をほとんど使いこなす事が出来ないだろうぜ」
ミレア「でも……無の使い手の方は、まだまだ引退するつもりはないみたいよ」
フィズ「ああ、その様だな。
 シャドウマスター……奴とはいずれ必ず決着をつけなきゃならねえ」
ミレア「フィズ……」
フィズ「あの時の借りは絶対に返してやるぜ、ジュオウ……」
ミレア「………………」
フィズ「……すまねえ。ジョーナンドの事思い出して、ついつい感情的になっちまった。
 そういや、さっきからエリが静かだな」
ミレア「……うん。なんかまた寝ちゃったみたいよ」
エリ「ZZZ……」
フィズ「本当だ。まぁ、属性の話もこれで一通り終わったわけだし、別にいいか。
 ところでよ。ミレア」
ミレア「何?」
フィズ「最初の話に戻るんだが……俺とお前、結局どっちが強いと思う?」
ミレア「当然私よ」
フィズ「……譲る気はない様だな」
ミレア「勿論。貴方も退くつもりはないみたいね。
 続き、やるの?」
フィズ「望むところだ、覚悟しやがれっ!」
ミレア「かかって来なさい、フィズ!」
エリ「ムニャ……うるさいなぁ……
 落ちろ!かみなり〜〜!」
『ピカピカピカピカ〜ッ!』
フィズ・ミレア『………………はい?』
エリ「にゅにゃ〜〜……もう食べられないよ〜……」
ミレア「な……何かあの娘、意味不明かつベタな寝言呟いてるけど……」
フィズ「今、雷落としたのってあいつだよな。しかも寝言で……天魔法発動させて……」
フィズ・ミレア『………………』
フィズ「……不毛な争いはもうやめようか、ミレア」
ミレア「……奇遇ね。私も同意見よ」
フィズ「ま……アレだ。世の中上には上がいるって話だな……」
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