作品名:RED EYES ACADEMY V 上海爆戦
作者:炎空&銀月火
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「逃げろ!こっちだ!!」
誰かの叫び声がして、すぐに銃声にかき消される。麗香は、必死で声のした方へ向かった。
その前に、一人の男が立ちふさがる。彼女を見るなり銃口を向け、マシンガンの引き金を引いた。
タタタッ
軽い破裂音が鳴り響く。あたりの壁や床が砕け、砂埃となって舞い上がった。
「…!」
砂埃の中からは、何も現れない。
―残っているはずの血痕さえも。
代わりに後ろに気配が現れた。慌てて振り向くが、間に合わない。
「退いて」
低い声と共に、強烈な跳び蹴りを首筋に喰らい、男は昏倒した。

「団長!こっちです!」
地下室へ向かって廊下を走る。途中、ブレーカーを落としてきたのであたりは真っ暗だ。
それでも住み慣れた場所。大体の見当は付く。
地下室へ飛びこみ、ドアの鍵をかける。その前に大きな木材で支えをする。
これでしばらくは大丈夫だろう。
改めて辺りを見回すと、暗闇に慣れた目に数人の団員達が映った。
「無事か」
「いえ、仲間が何人も…」
重い沈黙が立ちこめる。部屋の隅に座っている麗香がうつむいた時だった。
「団長! 見つかりました! だ生きています!」 
部屋の上部から声がした。そして小さな音を立てて天井が開き、中から孫が顔を出す。
うん、と頷いて彼は団員達に静かに告げた。
「よく聞いてくれ。…これで、最後だから」
外で、廊下を走る足音が響いた。だんだんこちらへ向かってくる。
「李 小牙という少年がいた。…彼は、人間ではない」
全員が、息をのんだ。
「彼…というのは間違っているな。彼女は素性を偽ってここに隠れていたんだ。そして」
言葉を切り、少し間をおく。
「今、ここを襲撃しているのが彼女と同じ種族。…レッドアイズだ」
「何故私がこんな事を知っているかというと、この前彼女が麗香を助けただろう?あの時の動き、あれは人間に出来る物ではなかった。それで少し調べたんだ。…少々昔のコネを使ってね」
「しかし、これだけは解っていて欲しい。彼女は奴らと同じ種族だが、仲間ではない。麗香は解るだろう?最初にここにやってきた奴は、彼女とは別人。彼女が仲間なら本人が来るはずだ」
「恐らく彼女と私達の立場は同じだろう。何かがあり、奴らに追われている。それに私達が巻き込まれた、といえなくもないが、そんなことで彼女を恨まないで欲しい」
いたぞ、ここだ、という声が扉の向こうで響いた。同時に何か重い物で扉を叩く音がする。
息を吸い込み、金は続けた。
「それともう一つ。これだけは守って欲しい。最後の団長命令だ」
「…生き残れ!」
ダーン!と凄まじい音を立てて扉が吹っ飛ぶ。同時に黎を筆頭としてレッドアイ達がなだれ込んできた。
空っぽの部屋を目にした黎は即座に呟く。
「まだ近くにいる。…探せ」


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