作品名:此処に兆一・命動章
作者:七木ゆづる千鉄
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待ちに待った夏合宿、垓和・始太郎・穣次郎も加わった、茂野河応援団振るメンバーによる初めての旅だ。此処で始太郎はこれからどんな恐怖が待っているか不安がっていて、穣次郎はこれからどんな冒険が待っているかと上機嫌である。太郎が心配性で次郎が調子者なことで、億太郎・億次郎親子との真逆さに驚いた一同である。此処で天河が、
「出発前の準備運動!」と叫び、全員で「天指し」・「地打ち」・「人呼」・「垓置」をした。
「次に一年の力を試す」と兆一、始太郎と穣次郎の二人に「構えろ」と言った。「左場読み剣」の構えをする始太郎に対して、穣次郎は両手を右側に寄せるだけ、一体どうなるんだ?と他の面々は思った。そして兆一の気合、
「はぁっ」!と共に激しい「気」の波が二人を襲う。それに対しての二人の反応。
始太郎は、「左場読み切り」をして「気」を切り避けた。
一方穣次郎は「右波」を放ち気の流れを跳ね返した。そこで起こる「気」の乱流を切ったのは始太郎だった。
これで二人の性格がはっきりした。始太郎は頭脳派で思慮深く臆病。穣次郎は肉体派で調子者で冒険好き。この二人をどう育てて行くか、今回の旅は笙子探しと共に大きなテーマとなるだろう。
「それじゃ全員乗ったか?出発するぞ」
天河のこの言葉と共に茂野河港を出る茂野河号。一体今回はどんな道をたどっていくのだろう?
「先ず垓乃島へいく、そして七地球環状線に乗る」と天河。茂野河号は垓乃島に向けて全速力で動き始めた。やがて見えて来る垓乃島の元山電鉄の車庫、茂野河号はその中の一つのレールに乗った。そして車止めに向けて突進、「危ない!」と善三郎・中が叫んだその時、目の前に黒い穴が開き、茂野河号はそのトンネルを通り始めた。そのトンネルをしばらく過ぎた後、茂野河号は今度は戊野河の垓乃島に辿り着き、江戸城目指して海上をひた走る。
「よし、江戸城が見えたぞ」億次郎の一言と共に茂野河号は江戸川を上り、戊野河を目指す。先ず戊野河で一旦休み、零子から笙子の情報を聞くのだ。
そして戊野河に辿り着き、零子と会おうとした一同に突然万和の、そうヨロズではなく万和の声が響いた。
「すまん兆一、笙子を助けてやってくれ」驚いたのは遥である。
「何でヨロズじゃない万和さんの声が聞こえるんだ?それもこんな時に」
「それはこれから零子君に会えば解りますよ」と言ったのは垓和。兎も角零子に会って事の真相を確かめなければいけない、と心に刻んだ一同だった。
駅では零子と戊野河の兵士一人が待っていた。
「これがあの、戊野河号ですか・・・」感動の声を上げた兵士、零子は皆の顔を見て、
「もう聞いたようだね、よっちゃんの声を」
と、頷いていた。一体ヨロズと笙子に何があったのか?
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