作品名:LOVE KISS
作者:ゆっち
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1月1日


新年明けましておめでとうございます。


いや、ちがう。


今日は、中学からの腐れ縁である水嶋孝明の誕生日。
今年で25歳だから、もう何年の付き合いになるやら…。


あ、オレは佐久間静樹。何か最近めっちゃ忙しくて…。
そんでも年末年始は来るわ、年末年始といったら会社の方はパニックで…。
そんな中で孝明は年を取る訳だ。大変だ……。


いつもは、ただ忙しいだけの年末年始。
でも、今年は違う。
妙に浮かれた孝明。おかしい………。


おかしいはずだ。孝明はただいま恋愛真っ只中。
最近できたらしくて、彼女が、かわいくてかわいくてしょーがないらしい。
ホント、辛口の孝明が………。珍しい事もあるもんだ。
“恋がいつも、甘いくちどけだったら…”なんて言ったの誰?
彼女が出来てからの孝明は、毎日甘い……。
彼女のいないオレにイヤミかまったく!!! 





◆◇◆◇◆





「おかしい………。」
「………新年早々、なにが?」
「紗智から、メールが来てない。」


またそれか………。


「あのなー。紗智ちゃんだって、暇人やないんだぜ?先生なんだろ?」
「おう。幼稚園の先生。エプロン姿もかわいかったぜ。」
「……見に行ったのか?」
「休みだったし、暇だったからな。」
「“有給を 無駄に使うな ストーカー”。おぉ、一句できた。誕生日プレゼントにやる。」
「いるか!!!!あぁ…、紗智からのメール…。」
「孝明、キャラちげーぞ。」
「“誕生日には、メールするからね”って言ってたのに。」
「忘れとるとか?」
「紗智が忘れるわけないだろ?!」
「わかんねーぞ。おまえ、紗智ちゃんの誕生日忘れてたろ?」
「う゛…!!」
「まぁ、とりあえず家に帰れ。まだ、1月1日なんだから。」
「おう……………。」


なんか、相当ヘコんでんな。最後の一言がキツかったかな…。
ま、いいか。あとは、紗智ちゃんがなんとかしてくれるし…。





◆◇◆◇◆





やっぱり、忘れてんのかなぁ…。



“わかんねーぞ。おまえ、紗智ちゃんの誕生日忘れてたろ?”



オレも紗智も、あんまり行事に捕らわれねーからなぁ…。


でも…。


いや…。オレのわがままだな。
自分だって忘れてたクセに、紗智には覚えといてほしいなんて…。
はぁ………。なんか、疲れたわ。
早く帰って、寝よ……。






孝明はそう思いつつ、人もまばらになった終電間近の電車に揺られる。
いつもの駅で降りて、温かい電車から降りたばかりの頬に冷たい風が触れる。


ぼちぼち栄えた町の一角にあるマンション。そこの最上階に孝明は住んでいる。
それなりのエントランスに入り、エレベーターで最上階まで上がる。


薄暗いマンションの廊下。
ふと見ると、自分の部屋のドアの前に人影がある。



「お帰りなさい。今日も遅かったね。」
「紗智っ!?!」
「し―――っ!!!近所迷惑だよ!」
「あ、悪ぃ…。」
「55…56…57……。」
「紗智…?」


カウントを始めた紗智は、急に孝明の首に腕を絡めた。
思えば、紗智からのキスは初めてだった。
暖かい紗智の舌が、オレの唇を突付く。
まるでノックしているかのようだった。
孝明は、紗智の舌を招き入れた。
10cmほどある身長差。
孝明は、紗智の腰を両手で包むように支えてやった。



しばらくして、紗智の唇が名残惜しそうに離れた。


「お誕生日、おめでとう。」
「…覚えててくれたのか?」
「もちろん。あ、ゴメンね?メールしなくて…。不安になった?」
「あぁ…。すげぇ不安になった。」
「ごめん……。」
「いいよ。覚えててくれたんだし…。さ、寒いから、中に入ろうか。」
「うん。」






寒いと思っていた部屋の中は、暖かかった。


「ヒーター…、付けといてくれたのか?」
「うん。部屋が寒いとイヤでしょ?」
「オレの帰り…、部屋の中で待ってれば良かったのに…。寒かっただろ?」
「でも、ちょっとでも早く孝明の顔見たかったから…。」
「紗智……。」
「あと、ゴメンね?プレゼントないんだ…。年末に生徒が交通事故で怪我しちゃってね…。それで買えなくてさ…。」
「そこで生徒ほったらかしにして、オレのプレゼント買うような紗智はオレの好きな紗智じゃないな。」
「孝明…。」
「それに、さっきのキスがプレゼントだろ?」
「…何でわかったの?恥ずかしい…。」
「あははは!紗智からのキスなんて、初めてだもんなぁ!いいプレゼント貰ったな。」
「なってすぐにメールしようかなって思ったんだけど、制限かかっちゃって…。だったら、顔見て言おうかなって…。」
「最後のシメに?」
「うん!!最初がダメなら、最後でしょ?!彼女の特権だね!!」
「…くっ!あははははは!!!」
「何で笑うのさぁ〜。」
「かわいいなぁ、ったく…。」
「そんなにかわいくないよ。」
「かわいいって。わざわざ、カウントまでしてくれて…。オレって幸せもんだな。誕生日の最後の時間を紗智からのキスで過ごせるなんて…。」
「もう言わないでよ…。すっごい恥ずかしいんだから…。」
「さーち。」
「なに?」
「一緒にお風呂入ろうか…?」
「えっ?!」
「冷えた体には、人肌と風呂の温もりが一番やで?」
「…うぅ〜…。」
「な?入ろ?」
「……うん……。」





◆◇◆◇◆





1月2日


おはようございます。


佐久間静樹です。今日もまた、朝から上機嫌の孝明です。
なにがあったかは、容易に想像できるところが
出会って17年目になる腐れ縁なんだろうか……。


うーん…。腐れ縁って怖いなぁ………。





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