作品名:for the Love of you.
作者:ゆっち
■ 目次





『くぅちゃん、はるちゃんの事好き?』
『大好き!!はるちゃんは、僕の事好き?』
『大好きだよ!!』
『へへっ。一緒だね?』
『うん。一緒だね?』





◆◇◆◇◆





RRRRR RRRRR………



「…もしもし?」
「起きてるか?国治。あと30分ほどで着くからな?」
「…あ―――…。」


マネージャーからの電話で起きる。それから重い腰を上げてバスルームへ。
シャワーを浴びて目を覚ました所で、軽い朝食を取る。そして着替えて歯を磨く。
いつもならここで“今日も頑張るで!!”と気合を入れるが、
今日はなんとなく入らない。原因はわかっている。


あの夢を見たからだ………。











それから30分。
マネージャーは時間どおりに迎えに来た。


「なんだ?国治。元気そうじゃないな。疲れたか?」
「疲れてねぇよ。」
「そう言えば、今日はバレンタインデーだな?!」
「そーいやぁ…。」


オレの初恋は幼稚園生の時。
家も近くだったから、いつも一緒にいた女の子。
名前は…、そう…。今でも覚えてる。遥って言ったっけ…。
でもその子は、父親の転勤で20年ほどアメリカに行く事になってしまった。




『イヤだよ!!くぅちゃんと会えなくなるなんて、はるちゃんイヤだよ!!』
『はるちゃん、ダメだよ。お父さんとお母さんが困っちゃうよ…。』
『でも、イヤだよぉ…!くぅちゃんは良いの?はるちゃんの事、キライなの?!』
『キライじゃないよ!!』
『これが最後のチョコになっちゃうかもしれないよ?ずっとくぅちゃんにチョコあげたいよぉ!!』
『はるちゃん。20年後の今日、僕、この幼稚園で待ってるから。その時に20個のチョコちょうだい?』
『くぅちゃん…?』
『ね?約束だよ?』
『うん。絶対だよ。』




“20年後の今日”。それは25歳のバレンタインデー。
いままで、女性とそれなりの付き合いはあったけど、一瞬でも遥を忘れることはなかった。






今日は午前中で終わりだから、午後から行こう……。
覚えてるかな……。





◆◇◆◇◆





P.M. 11:00






トラブルがあって午前中じゃ終わらなかった。
仕事中も遥のことが気になった。


来ているのかな?


覚えているのかな?


もし、来てなかったら……。


もし、覚えていなかったら……。








オレは、マネージャーの車を借りて約束の幼稚園まで急いだ。
坂の上にある幼稚園。
坂のふもとから、車立ち入り禁止だったので近くに止めて走った。



あと15分。



坂の途中で門の頭が見えてきた。



遥……。君はそこにいる……?



上りきって顔を上げると、そこには一人の女性が立っていた。


「こら!くぅちゃん!!遅いぞ?」
「遥………?」
「なんてね。お仕事だったんでしょ?お疲れ様。」
「遥…っ!」


抱きしめた遥の体は、氷のように冷え切っていた。


「遅くなって、ほんとにゴメン。こんな冷たくなって……。」
「大丈夫だよ。気にしないで?それより、これ………。」


遥はバッグから箱を取り出した。


「これ…。」
「うん。20年分のバレンタインチョコ。」
「覚えててくれたのか?」
「もちろん。忘れた事なんてなかったよ。」
「遥……………。」
「受け取ってくれますか?」
「あぁ。ずっと待ってたんだから…。」


箱を開けてみると、小柄のハート型のチョコレートが20個入っていた。
その一つ一つに書いてあった。



“6歳のくぅちゃんへ”


“7歳のくぅちゃんへ”


“8歳のくぅちゃんへ”


“9歳のくぅちゃんへ”


“10歳のくぅちゃんへ”


“11歳のくぅちゃんへ”


“12歳のくぅちゃんへ”


“13歳のくぅちゃんへ”


“14歳のくぅちゃんへ”


“15歳のくぅちゃんへ”


“16歳のくぅちゃんへ”


“17歳のくぅちゃんへ”


“18歳のくぅちゃんへ”


“19歳のくぅちゃんへ”


“20歳のくぅちゃんへ”


“21歳のくぅちゃんへ”


“22歳のくぅちゃんへ”


“23歳のくぅちゃんへ”


“24歳のくぅちゃんへ”


“25歳のくぅちゃんへ”








君を愛するが故に、ずっとこのチョコを待ってた。
このチョコをくれる君を、ずっとずっと待ってたんだ………。






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