作品名:奇妙戦歴〜ブルース・コア〜
作者:光夜
次の回 → ■ 目次
何かが暗闇で動いた。
ガサササ
草を分けてその生き物は獲物を探していた、執拗なまでに獲物を探す様は獣のそれと似ていた。
獣、と言ったがその姿はどうだろう、生き物は手が鋭く鋭利な刃のようになっておりその姿は大きなサルのようだ。
だがその目からは知性を感じさせる光が見える。
目的である獲物は草の陰に隠れていた、が、運悪く枝を踏んでしまい自分の居所を教えてしまった。
サルのような生き物は目を赤く血走らせて音のほうに振り向き様走る、一気に草ごとその鋭い手で切り裂いたがそこのは切り裂かれた草の他に草が無くなり出来たサークル以外何もなかった。
草を刈られる少し前、生き物が狙っていたその獲物は木の上にいた。
その獲物とは人だ、大人――ではない、子供でもない中間の背丈、高校生ぐらいだろうか、目鼻立ちは整っており暗闇でも判る小年だ。
暗闇で見えないが少年は何か細長い物を手にしていた、長さからして一メートル以上はある、下には獲物を見失い何処に消えたのか状況が理解できていない獣が頭をかきながら遠ざかって行った。
(もう少し)
少年は何かを計るように獣と自分の乗っている木との間合いを計る、一歩、また一歩と獣は遠ざかる。
獣が少年のいる木から数メートル離れた時、覚悟を決めたように少年は棒を腰に構えその低い姿勢のまま木から飛び降りた。
ダン!
何かが――――少年が降りた音に気づいた獣はその場所に振り返った、と同時に少年は一気に駆け出し腰に構えた長い何かを振りぬいた。
グバァァ!
振りぬいた何かはその巨大な体を一刀両断にし声もなくその場に崩れさせた、見事な切れ味だ。
雲間から月明かりが差し込みその細長い物を照らした・・・・・・・刀だ、棒だと思われていた物は刀で刃渡り一メートルと言った所だ光に照らされ青白く光り唾には絵が、「桜」が彫られている。
少年は振り返り先ほど斬った生き物の死体を見て小さくつぶやいた。
「違う、こいつじゃない」
何が違うのかその顔からは何も読めない、再び振り返り何事無かったように歩き出した。
「ここにはもう居ない、次は・・・・・・・・・・田町・・・か、くそ」
何か悔しそうに呟く。
少年が立ち去った後あの死体は無くなっていた、まるで砂になって風に吹かれたように・・・・・・・・。
七月の生暖かい風だけが後に残った。
―――そして、今彼が立っているのは高い丘の上だった。
そこから見下ろす町、田町と言う。
「また、ここか」
記憶にあるこの町の風景が変わっていない事を確認して少し心が落ち着く。
丘の上には寂れた神社がある、右を見ればこの町の駅がある。
左へ移動させていくと商店街らしき町並みが、もっとも、今は夜中で明かりはついていない。
一番左には学校が見える。
(情報が先か、あそこへ行けば何かわかるかもしれない)
じっと、学校を見る少年。
目的を決めたあとは簡単だった。次の日には転入の許可を取りそこの学生になればいい―――――いいはずだったのに。
この町で何かが起こる、と、何かがそう決めていた。
そして彼にも何かが起こると。
その時持っていた刀が光った。
そのまま彼は何かにとりつかれた様に脱兎のごとく走り出した。
行く先はこの先の森の中。
また、何かの砕ける音が森に響いてきた。
何かが叫ぶ声も―――――
彼の名前は斑鳩(いかるが)と言う、なぜ刀で獣と戦うのか、それはこれから始まる物語に記されている。
では、一夏の戦いをどうぞ。
次の回 → ■ 目次
Novel Collectionsトップページ