作品名:探求同盟−死体探し編−
作者:光夜
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 どうも、語り部です。はじめましての方もお久しぶりの方も、私のことは気にしないでください。私はただの下準備係であって誰かと関わることはありません。
 それよりも、です。前回の『開かずの扉編』はいかがでしたか?え?いまいち内容とインパクトに欠ける?そう言われましても私はあくまで彼らを紹介する立場であって彼らの行動を決めることは出来ません、彼らは自分たちの考えたまでの行動をとって事件を解決に導いただけに過ぎませんから。
 なんですか?もう少し突っ込んだことも知りたい?ええ、構いませんが少しだけ私の下らない話を聞いていただきたいと思います。なに、すぐに済みますから気長にお付き合いくださいな。
 ネクロマンサーと言う言葉をご存知でしょうか?
大昔の外国には彼らは多く存在していました。死霊魔術師とも訳され、死体からゾンビやスケルトンを作り出す魔法使いの事です。ブードゥー教などの死霊崇拝がモチーフになっていると考えられていますね。
皆さんもファンタジー小説などに多く登場するのを見かけたことがあるかもしれませんが、その暗いイメージのため味方として登場することは余り無いでしょうね。他にもゾンビを使役するだけでなく、自らの死後もアンデッドとして復活する等の伝承もあるようです。
そう、今回のキーワードは『死体』です。別段、私の説明したネクロマンサーが出てくるわけでもありません。この化学が発達した時代に死体の蘇生儀礼を行う輩は外国でもほとんどありえません。現代に残っているのは伝承やその方法であり、かといってそれを用いたところで使えるわけでもありませんがね。
ところで、『死体』とは何でしょう?皆さんはわかりますか、死体の定義を。

心臓が止まった人間?
意識を回復しない人間?
脳が働かなくなった人間?
瞳孔が光に反応しなくなった人間?
または医学論が示す死の三大定義を補った人間?

 私はそうは思いませんねぇ。え?じゃあ何だって言うのかですって?それは人それぞれですよ。死体という死後の状態を表現するのであればそれこそ医学の本を開けばすぐに出てきます。そうではなく、人間の心理や論理や道徳といった中で、死体とはどの様に扱われ表現されるのか、それを私は聞きたいのですよ。
 ほら、さっきまで生きていたのだから『人間』、いまは死んでいるからカルシウムや水分やタンパク質の『塊・物質・物体』。人間は自然界の存在であることは明白、それにはっきりとした明暗をつけることは大昔から禁忌とされている所もあります。
 先に説明したネクロマンサーは、そんな人間論理や道徳を捨てた人間が本当に死体を『道具や物』として認識している人間なんです。ではネクロマンサーのように、意図的に蘇生され『生ける屍(アンデッド)』となった彼らには意思はあると思いますか?ない?なぜないといえますか、彼らは蘇生させられた時点で行動原理を持つことが許されたんです。それはとてもあやふやな存在であって不安定な事実。
 いかにしてネクロマンサーはアンデッドを作ったんでしょうね。死体を単純に動かすのなら、糸でも括り付ければいいと思いませんか?そうしないのは自由に、そして自分の意志で動かせることが必要だからです。
 『自分の意思』で『自由に動かせる』とは、つまり『命令』することでそれを『認識』しその通りに『行動する』ことを言います。こうなるとアンデッドに行動意思があるとは思えませんか?
 では魂はあるのでしょうか?ない?はい、それは明確に無いと言えますね。彼らは『行動理念』を持っているだけであり、『意思』による感情や自我は皆無だといえます。では、彼らを動かせる『行動理念』とは一体何なんでしょうか?それさえ解れば、ネクロマンサーが何を用いて死体を動かせるのかが解るかもしれませんね。
 今回のお話も、そんな死体への行動理念を突き詰める彼と彼女のちょっと前のお話。そう、『開かずの扉』から約三ヶ月から半年前のお話し。え、なんでそんなにアバウトなのか、ですか?気にしないでください、彼らの記録の紹介に時間など関係ありません。必要なのはその過程で何をしていたか、それさえ知っていれば十分じゃないでしょうか。
 今より前で、昔よりも信頼感の育った彼らの出来事を、今回もお楽しみください。

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