作品名:RED EYES ACADEMY U 脱走
作者:炎空&銀月火
次の回 → ■ 目次
登場人物&用語紹介

潮沢 凛
十三歳。現在は総合戦闘訓練を受けている。この話の一応主人公。両親の赴任先であるロシアで生まれ、その後アカデミーに収容される。五人目の本物。
レシカ・アンドリュー
十三歳。現在は射撃訓練を受けている。アカデミー内で誕生したキメラ・レッドアイ。
ハデス・リコルダー
十三歳。現在は戦闘指揮の訓練を受けている。アカデミー内で誕生したキメラ・レッドアイ。
西村京子
五十五歳。アカデミーの最高幹部の補佐。
《アカデミー》
正式名称はレッド・アイズ・アカデミー。一九八六年にアメリカに設立。表向きは製薬会社だが、実際は…?
《レッドアイ》
新種の人類亜種。人間とは僅かに遺伝子配列が違う。並はずれた運動能力と知能を持つ。自然に発生する確率はほぼ0%。
《キメラ・レッドアイ》 
オリジナルの遺伝子を組み込まれたトランスジェニック動物。アカデミーが大量生産している。
《オリジナル》
キメラではなく、自然に生まれたレッドアイ。その誕生には謎が多い。非常に珍しく、世界では五人しか確認されていない。
 

序章 悪夢

これは夢だ。 
 夢に違いない。
 夢でないと困る。
 夢であってくれ…!
 祈るような彼女の意志など関係ないと言うように悪夢は進む。
 比較的小柄な男に地下室へ連れて行かれ、そこで待っているようにと諭された。何故か彼女はそのわけも聞かず、大人しく言われるとおりにじっとしていた。
 部屋の上で、ドンドンと扉を叩く音が鳴り響いている。彼女の中で、耐えきれないほどの恐怖心がふくれあがった。
 扉を叩く音はだんだん大きくなり、木のきしむような嫌な音が響きだした。
 ドンドン、ギシギシギシギシギシ
 唐突に扉を叩く音が消えた。一瞬の静寂の裏には激しく打ち付ける雨音だけが鳴り響く。そして。
 ドォォオン
凄まじい音と共に重い木の扉が吹っ飛んだような音がした。そのドアを踏みつけて家の中に入ってくるいくつもの足音と共に。
(誰か入ってくる…!)
恐怖に引きつり、開きっぱなしの口から荒い息が漏れる。両親の激しい怒鳴り声も、彼女の恐怖に拍車をかけた。
(誰か…誰か来て……!)
まだ幼い少女はなすすべもなく頭を抱え込んだ。

「やめてくれ!ここにはそんな子はいない!」
「お願い!出て行って!」
だが必死に懇願する二人の前に一人の女性が立ちはだかった。全身黒づくめのボディースーツに身を包んだ金髪の美女。天使のように整った顔に、冷たい笑みが浮かんだ。二人がゾッとして逃げようとした時にはもう遅い。
 女の手が二人の方へと伸びる。その先には冷たく光る黒い銃があった。青ざめて立ちすくんだ二人に、見下したような視線を投げかけて、彼女はあっさりと引き金を引いた。

「…?」
かすかな破裂音を聞いたような気がして、彼女は顔を上げた。そう言えばさっきから両親の声が聞こえない。その代わりに家の中を歩き回る複数の足音や、がちゃがちゃと何かを壊すような音が届いていた。
(何…? 何がどうなってるの…?)
言いようのない不安に駆られて彼女は立ち上がった。震える足を無理矢理引きずって地上部へ出る階段へ向かう。一歩歩くごとにますます不安は増してくる。ようやく扉へたどり着いた時、既に彼女は半泣きだった。
 相変わらず足音は続いている。だが、地上に近づくにつれ、彼女の鋭敏な耳は侵入者の話し声をとらえていた。
「早く探せ! いくらオリジナルでもまだ子どもだ。この家から出てはいまい!」
聞いたことのない女の声。さらにふくれる不安感に耐えられず、彼女は急いで階下へ戻ろうとした。
 さっと振り返って階段を駆け降る。だが彼女は少し急ぎすぎた。焦って前に出した足が近くのバケツに引っかかり、転がり落ちたバケツがけたたましい音を立てる。
 長すぎる沈黙の後、彼女のすぐ後ろのドアに向かってゆっくりと足音が近づいてきた。
「あ…ああ…」
恐怖で声も出ない少女の前で、金属製のドアノブがゆっくりと回り、重い木のドアが音を立てて開いた。
「……………!」
彼女の目が大きく見開かれた。真紅の瞳に映っていたのは、真っ赤な海に横たわる変わり果てた両親の姿。
 思わず後ずさりをするが、そこは運悪く階段だった。
 足を踏み外し、体がぐらりと揺れる。急激な落下感と頭への重い衝撃。
  彼女の口から悲鳴が迸った。

中書き?
はい、連載開始です。ってか一時期この辺りはこのサイトに載せていたことがありますね…。まあ、気長に待っていてください。
次の回 → ■ 目次
Novel Collectionsトップページ