作品名:RED EYES ACADEMYT
作者:炎空&銀月火
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登場人物生体データ
・潮沢凛、主人公。13歳。国籍はアメリカ、民族系統は日本。1993年、ロシアで5人目のオリジナルとして発見、以後アカデミーで育つ。レッドアイ含有率100%
・レシカ・アンドリュー、13歳。国籍アメリカ。4人目の遺伝子を組み込まれ、1993年にアカデミーで誕生。レッドアイ含有率76%
・ハデス・リコルダー、13歳。3人目の遺伝子を組み込まれ、1992年に誕生。レッドアイ率80パーセント。
・ブルータス・オークウッド、20歳。近距離戦に長ける。2人目の遺伝子を持つ。レッドアイ率60%。
      ☆☆☆  
「りーん!ちょっと待って!伝言がぁああああ・・」
彼女・・・潮沢凛はその声(いや音か?)に反応して振り向く。途端に目の前で物体が思いっきり突っ込んできてズルベターンとすっころんだ。物体、いや凛の親友のハデスである。凛は内心苦笑しながら彼女を助け起こした。
「気をつけなよ!さっきここを管理人のおっさんが掃除してたから滑るよ。」
てててて・・・。と腰をさすっているハデスに話しかけながら凛は溜息をついた。
(ハデス・リコルダー。13歳。IQレベルはこのアカデミー内でもトップクラス。運動神経は最悪だけど、現在はサクセサークラスに在籍中。そのエリートがこれだもんな・・・)
「そうそう!こんな所で転んでる場合じゃないわ。校長からの伝言よ!」
びっくり箱のように飛び跳ねながら、ハデスは凛にわめき立てた。
「しっかしあんたも常習ね・・三回目よ」
「3回目じゃないよ。そのうち二回はレシカに付き添って行ったんだから」
「まあ、それは仕方ないわね・・」
彼女の性格だと確かに仕方ない。それは分かるが・・。
また溜息をついて、凛は会話を続けた。
「でもさ、校長が何の用があるの?」
「さあ。私は聞いてないわ」
ふーん・・・どうせまた、変な検査受けろって事だろう・・
 そう考えた時だった。
「・・・・!」
後ろに凛のよく見知った雰囲気があった。それもとても迷惑な奴の気配が。
適当に会話を続けながらごく自然に右手を後ろに回す。予想通りのことが起きた
小さなとがった物が空気を切り裂いて飛来する。フィルムの早送りのように凛の指先にそれが収まった。小さなダーツだ。
すぐに手首を返して投げ返す。襲撃者は、投げたはずのダーツが戻ってきたことに驚いて、動けない。それが隙になった。
またですか、と溜息をつくハデスを尻目に凛はふりかえる。そのまま強く踏み切り接近。硬い拳を鳩尾にぶち込む。
「ぐ・・・・」
襲撃者は反応できず、もろに食らって呻き声を漏らす。そしてそのまま床に崩れた。
「あ〜の〜な〜」
凛の地獄から響くような低い声に、襲撃者(凛と同じ年頃の少女だ)はアハアハアハハと乾いた笑みを漏らす。凛の頭の中で、「堪忍袋の緒」が切れた。
「いい加減にしろ!本日何回目の襲撃だ!」
 人目も考えずに怒鳴り散らす凛を、ハデスがなだめる。―日常茶飯事だ。
「まあまあ、ケガもなかったんだし・・・」
「ケガもなかったんだしだって!こいつの為にこっちがどんだけ迷惑被ってるのか知ってんの!」
 その程度で怒りを静める凛ではない。
「それよりレシカ、あんた何か言うことないの」
相変わらずハハハと笑っている彼女は、笑い顔のまま拳を握りしめて熱く語る。
「次こそは、必ず!」
「ごめんなさい、だろーが!」
 激しくレシカを揺さぶり怒鳴り散らす凛。酔ったのか、レシカの顔が真っ青になってきたのでハデスが慌てて止めた。
「ちょっと、そんなにやったら死んじゃうよ!」
 ―完全に聞こえていない。これも日常茶飯事。
「わかったかぁ!」
「へーい。んじゃ次からはもっと工夫しよう」
―頭が痛い・・・。
「せめて飛び道具は止めろ。怪我人が出る」
「しかたないじゃん!特技を生かさないと」 
ちなみにレシカの特技は遠距離からの狙撃である。彼女は6キロ離れた的も絶対に外さないという凄まじい能力の持ち主なのだ。
「それよりさ、なんか用あるの?それとも只の決闘?」
 牙を剥く二人を刺激しないよう恐る恐るとハデスが聞く。
「なんでこんな奴と決闘なんか!」
「そうじゃなくて、校長が呼んでるの!」
「それなら何で凛と決闘してんのよ。余計遅くなるでしょ」
 もっともな意見だが、レシカに理屈は通じない。
「だって、普通に言ったんじゃ面白くないじゃん!」
 瞬間的に頭の中に浮かんだ100ほどの単語をどうにか押し殺しかみ砕いて飲み込んでから凛は立ち上がった。
「じゃあ、行かないと。校長って怒ったら結構怖いんだよ」
そう言うと、まだ戦う気満々のレシカを睨み付けて凛はその場を立ち去った。

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