作品名:自戒――なんて大層なもんじゃないけど。
作者:甲斐 京
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ふざけんな!
くよくよくよくよしやがって、お前何様のつもりだよ!!

え?
あたし様?
知ってるよそんなん。
こんな欲深くて自意識過剰で臆病者で情けない人間、あたしくらいしかいないんじゃないの?

ちょっと辛いことあったからって落ち込んで。
自分のこと可哀想だと思える人間って幸せだよね、なんて偉ぶって。
高尚な世界に入った気分で、有頂天?

自分のこと、哀れんでるのはお前だよ。
哀れんで、甘やかして、その姿が一番惨め。
ちょっと珍しい困難に直面してる自分に酔いしれて。
「ああ、何て可哀想なあたし!」なんて、悲劇の主役にでもなったつもりなんじゃないの?


・・・ちょっと言い過ぎたかな。


一度、周りを見回してみなよ。
空があって、月があって、風が吹いてる。
花が揺れて、太陽の光が降り注いでる。
ピンクの花びらが光に透けて、なかなか綺麗じゃん?

何を望むの?
これ以上、何が欲しいの?

甘えてもいいよ。休んでもいいよ。
落ち込むときがあってもいい。不満言ったっていいんじゃない?

でも忘れないで。
あなたは不幸じゃない。

あなたが好きなもの。あなたのことを好きなもの。いつだって、そこにあるから。

だから忘れないで。
そこに存在してくれるもの。あなたを思ってくれる人。
その大切さを。その人たちへの『ありがとう』を。

空があって、月があって、風が吹いてる。
花が揺れて、太陽の光が降り注いでる。
太陽に透けるピンクの花びらを綺麗だと思える。
そんなあたしは、なかなか幸せなんじゃない?

空も、月も、風も。
花も、太陽も、直面する困難さえも。
わたしが出会ったもののすべては、わたしがいなきゃ、出会えなかったもの。

悲劇じゃないけど、主役なんだろうね。
シェイクスピアは、すごいこと言ったよ。

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