作品名:トリガー
作者:城ヶ崎 勇輝
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 時は200]年 日本
 日本は今や暗黒の国となっていた。
事の発端は王政主義団体「クラックエイジ」の大反乱で、日本の首相を暗殺、国会を占領すると言う事件からだ。
こうした自体に、自衛隊と連合軍が出動し、事態を治めようとしたが、クラックエイジの得意な戦法であるゲリラ戦で連合軍までもが撤退にまで追い込まれたのである。
そして、暗黒の集団はテレビ局や新聞社など、あらゆる情報を発信する場と空港、港などを封鎖し、日本は世界から完全に孤立した。
 刻一刻と、黒い血が日本の血液に混ざり、純粋な紅い血が濁り、漆黒の血になろうとしている…。

    〜トリガー〜 序章

 「本日の天気は、我が国の絶対的な神である天皇陛下のお力により、全国的に晴れとなりました」
神谷鳥牙(みたにちょうが)の日常はいつもこの天気予報を見て始まる。
しかし、近頃の天気予報は必ずと言っていいほど、『天皇陛下』と言う言葉が出てくる。そして、お天気のお姉さんの目が妙にキョロキョロする。まるで、誰かに狙われているのでは…と恐れているかのように。
「今日も天皇陛下に感謝と敬意を込めて、いってらっしゃい!」
お天気お姉さんが作り笑いをしてテレビを見ている人に手を振っている。
「あなた、そろそろ出かける時間じゃないの?」
エプロンの似合う女性がやって来て、彼に言った。
彼女は、鳥牙の妻。名前は神谷たみ。後ろから読んでも『みたにたみ』と言えるが、それは偶然である。
「おお、もうそんな時間か…」彼は時計を見て玄関の方へ向かった「今日は早く帰れそうだよ」
革靴を履きながら、たみにそう告げる。
「よかった。今日はちょっと豪華な夕食にしようと思ってたのよ」
鳥牙が立つのとほぼ同時に、彼の携帯が鳴った。
彼は携帯を開き、誰からなのかを確認した。
-吉川千惟-
一瞬、体が凍てついた。そして、恐る恐るボタンを押した。
「もしもし…はい………。わかりました」
数秒の会話の後、彼は携帯を切った。
「誰から?」妻が不思議そうに尋ねた。
夫の額からチラッと汗がにじみ出た。
「えっと…会社の同僚から…。今日はやっぱり遅れるよ。もしかしたらかなり長い残業になりそうだ」
なんとかそう言ったが、妻は夫をじっと睨みつける。
「なんか怪しい…」たみはそう呟いた「本当に残業?残業なんて始めてだけど」
実の所、本当にこれは残業だ。しかし、鳥牙は根っこの部分で嘘をついている。
「ざ、残業だよ…。あ、もう行かないと本当に会社に遅れる…」
夫がそそくさと言うと、妻は急に微笑んだ。
「じゃあ、頑張ってね」そして、心配そうに「クラックエイジには…十分気をつけてね」と言った。
たみはこれ以上無いほど夫のことを信頼している。そして、それと同じくらい夫を心配している何よりの証拠だ。
「行ってきます」鳥牙はクールに言った「大丈夫だよ。クラックエイジなら、誰かが倒してくれるさ」
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