作品名:なんちゃってソードレボリューション
作者:殻鎖希
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 『ソードレボリューション』という話がある。
 凄腕の剣士にして探偵でもあるフィズ・ライアスという男の活躍を描いた物語だ。その中でフィズは数々の事件と出会い、また時には誰かと剣を交える事によってめざましく成長していくのである。
 これから語られる物語は、もう一つのソードレボリューションである。オリジナルとは異なり、コメディを中心としてストーリーは展開されていく。よって、あくまでもパロディ的な作品としてこの物語を楽しんでいただきたい。
 『ソードレボリューション』と出会った全ての読者達のために。今ここに『なんちゃってソードレボリューション』の幕が上がる。

※本編のストーリーを把握していないと何の事だか分からない点が多々ありますので、この作品を読む前にファンタジー小説『ソードレボリューション』に目を通しておく事をお勧めします。

Mission1 人喰い花を退治せよ?

      1
パグラム「申し遅れたわね。
 私はパグラム・ユーネルという者よ」
フィズ「俺の名はフィズ。しがなく探偵稼業を営んでいる、シケた男だよ。こいつも何かの縁だ。よろしくな」
パグラム(うわ、キモ。いきなり自分で自分の事、シケた男とか言ってるよ、この人……)
フィズ「何か言ったかい?」
パグラム「ううん、別に(笑)」
フィズ「何だよ、その(笑)ってのは」
パグラム「いえ、何でも。ホホホホ」
フィズ「初めて見たよ。ホントにホホホとかって笑うヤツ。
 まぁ何でもいいんだけど、とりあえず干し肉でも食うかい?」
パグラム「助かるわ。水も携帯食も底をついててね。これからどうするか、途方に暮れてたのよ。この分だと明日からは、アインの村の人達の肉を喰らい、骨をしゃぶり、血を飲み下す生活をしないといけないところだったかしら」
フィズ「村まで行くなら人を喰う前に食堂に行け〜っ!」
パグラム「冗談よ。私、人肉ってあんまり好きじゃないから」
フィズ「好き嫌いで食わないのかよ!つ〜か、食った事あるのか?いつどこで誰を何時何分何秒?」
パグラム「そんな野暮な事聞かないで」
フィズ「野暮なのか?やっぱり女ってのは分からんもんだな」
パグラム「ところで貴方、探偵とか言ってたけど、フリーなの?」
フィズ「組織には属してないぜ。かと言って、天涯孤独の身でもない。相棒が一人いる。ちなみに現在は別行動中」
パグラム「随分と口数の多い探偵ね。ところでおねしょは何歳までしてたの?」
フィズ「ああ、あれは確か七年前の朝……って何言わせるんだよ!」
パグラム「勢いで喋ってくれそうな気がして(笑)」
フィズ「(笑)はやめぃ!」
ミレア「公式設定追加ね。フィズ・ライアスは七年前までおねしょを……」
フィズ「してない、してない、嘘ですよ、読者の皆さん!
 ていうか、お前別行動中だろ、相方!何でこんなとこにいるんだよ?」
ミレア「面白そうだったんで、つい。
 あ、私仕事があるから帰るね」
フィズ「もう戻ってくんな!」
パグラム「はい、押さえて押さえて。
 随分元気な探偵さんね。そんなにお喋りだと、その内自分で自分の身を滅ぼすわよ」
フィズ「知られてヤバい事は喋ってない。だったら別にいいんじゃないか」
パグラム「……おねしょは?」
フィズ「まだ引きずるか、そのエピソード」
パグラム「その内、ファンの方からクレームが来るわよ」
フィズ「いや、何かもう今までの段階でクレームは十分来そうだけど。
 とりあえずクレームが来る前に、少し話をさせてもらうぜ。まずは確認だ。こいつを見てくれ」
パグラム「何見せてくれるの?もしかしてパンツ?」
フィズ「違うわぁ!何を期待しとるんだ、お前は。
 依頼状だよ、依頼状。今俺達がいるアインの洞窟に棲みついた人喰い花を始末する事と、その洞窟からいつまでたっても帰ってこない吟遊詩人を保護する事の二点!それが俺の仕事だ」
パグラム「えらく説明的な言い方ね」
フィズ「分かりやすいだろ?
 この依頼状に書いてある吟遊詩人とは、ズバリあんたの事だ。間違いないな?」
パグラム「一週間ほど前に、私も人喰い花退治を引き受けたわ。でも参ってるのよ……はっきり言って。
 私もここに来て初めて知ったんだけど、人喰い花ってね……鼾と寝言が五月蠅いの」
フィズ「寝るんかい。人喰い花!
 じゃあまさかあんたが参ってるっていうのは……」
パグラム「そう、寝不足。乙女にとっては美容の大敵よ。村の人も皆困ってるみたい」
フィズ「洞窟の外にまで響き渡るとはな。確かにただ者じゃねえ。近所迷惑もいいとこだぜ。
 しかし、アインの湧き水やあんたの相棒の話についてはどうなったんだ?」
パグラム「何の話?」
フィズ「ほら、あんたにゃ確か相棒がいたろ。メルブって名前の」
パグラム「ああ、メルブなら多分今頃ルーペと太陽を使って黒い物を燃やす遊びをしてると思うわ」
フィズ「暗い奴だな、オイ」
パグラム「とにかく私達は世界の人々の安眠を守るために、人喰い花と闘わなきゃいけないの」
フィズ「いつの間にかスケールでかくなってるし。そもそもそんな話だっけ?」
パグラム「何でもいいわ。とにかく私達は闘わなければならない。
 覚悟を決めなさい、フィズ」
フィズ「いや、今の話聞いてると、かえって覚悟が揺らいできたような……」
パグラム「何でもいいからとにかく行ってらっしゃい。ここで待ってるからね」
フィズ「あんたは行かないのかい?」
パグラム「私はここで夏休みの宿題でも仕上げてるわ。」
フィズ「もう何が何だか分からなくなってきたけどさ。
 ……とりあえず行ってくるぜ」
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