作品名:i n f u s e
作者:さくらみなこ
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青々と茂る木々に覆われた緑色地(りょくしょくち)
海原を隔てて湖の中心にある青色地(せいしょくち)
それらに住む人々はその地で国を作り、数百年に渡って互いの
叡智を交流し合い、幾度かの争いで真からの
和解はなかったものの、共に成長を磨げてきた。
しかし青色地には、すべての病原菌の抗体を持つ両性体(りょうせいたい)が
減少した為に病魔が蔓延る。
魔が存在し始めたのである。
パンドラの箱が開けられてしまったかのように病魔が
人間の心までも蝕み、人類を滅ぼし始めていったのだ。
技術や文化が緑色地とは違い、富を得ている人々が
比べものにならないくらい、多く存在する青色地だったが、両性体は
すべての生物と共存するという偏見の無い、多大な自然を持つ
緑色地を好み、果ては流れて行くようになった。
緑色地の先の権力者ウス王は、抗体を持つ両性体を
確保することだけが魔から国を守る、ただ一つの方法と考え、緑色地の人々の
身を守る為に、やむなく青色地との間を閉鎖することに踏み切った。
鎖国が始まって十数年。
内乱が起こる青色地のその妬み、恨み、憎悪、悲痛。
青色地を駆けめぐる闇の鉾先は、一方的に閉鎖してしまった魔の存在しない
緑色地に向けられていった。
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