作品名:あっちとこっち
作者:槌乍
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 白い
 今僕が居る場所は、とてつもなく真っ白だった。
 色があるとしたら、鉛筆で描かれたまっすぐ、永遠と続く道。だと思われるものに、サイドには、開くのか開かないのかもわからないいろいろな大きさのした建物だ。
 だがそれが僕には、ビルや店だということを、なぜか認識している。
 解らないはずなのに

 見たこともない世界
 夢でも見たことがない…‥‥夢って何??
 今までの記憶がない。
 今見たこの鉛筆のような世界でしか
 すべてを見たことがないかもしれない。というか、僕はどうやってここに来たのだろう。
 どうやって生まれたのだろう。
 何億年も昔に戻れば、なんとなく解ってくるような気もしてきていた。
 46億年前。
 地球が出来たといわれている。そんなの今は関係ない。
 ソッと、その「ビル」の目の前に立つと、そこには動いたとおりに向こうも動く僕が居た。
 「鏡」だ。
 うつった自分は、とても醜く、鉛筆一本で書かれたようなものだった。
 
 僕は…‥なに?

 これをなんと言うかはわからない。
 後ろには鉛筆でかき消すように作られた、真っ黒な闇がある。
 (行きたくない)
 そのことが、僕には響き渡るように聞こえてくる。
 ボーッとその闇を見つめる僕と、その闇。
 にらみ合う。どちらが先にこけるかを探して。
 すると、向こうで何かが動いた。
 何が動いたかは解らないが、何かが動いたなどと考えていたら、いつの間にか向こうから僕と同じようなものが、まっすぐ突き進む鉛筆で描かれた向こうを進んでいく。
 僕と同じようだが、少し違う。
 向こうから来た者たちは、鉛筆一本ではない。
 何度も書き換えられるかのような勢いで、何本もの鉛筆の線で描かれていた。
 
 あぁ。僕は一人ぼっちなんだな。

 潰される勢いで向こうからは、何匹もの者が歩いてきた。
 僕なんか気にしない勢いで。倒すかのように。
 だが、僕はわかっていた。この闇は、少しずつこの白い街を埋めつくす事くらい。解っていた。少しずつ。動いているのも見えている。解ってるよ。
 ソッと目を閉じて、者の流れに身を任せる。
 感覚が無くなれば、すべてやみに落ちたという結論が出てくれる。
 あえてそれは、事故。となる。


 あぁ。僕はいつまでも一人ぼっちになってしまうんだ。

 

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