[馬の耳に風]

MAKING APPEND NOTE
Ryou への返事
 ですからむしろ実地の学徳の上から言えば法王よりもこの方が尊いので、私は幸いにしてこういう尊い方を師匠として仕えるような仕合せを得た。これはなかなかチベットでは容易の事でない。ことにチベットは階級の厳しいところですから、お遇い申すことさえも容易に出来ない尊い方である。たといある伝手を経てお逢い申しても、その方から話を聞くということは余程困難な事です。しかるに私はその方を師匠として教えを受けるようになったのは、全く前大蔵大臣の厚意によってこういうよい幸福を得ることになったのである。それでチベット仏教の顕部についても秘密部についてもこの方から充分学ぶことが出来た。しかしこのチー・リンボチェという方は余程妙な方で、私を一見してすぐに私の素性を知って居たかのように取り扱われたです。しかしまあ当分害がなかろうからここに居るがよいというような事を暗々裡に漏らされた。
 私は実に恐ろしくなったけれども、また私の心の中を見て下すったものと見えて、真実に仏教を教えて下すったです。その有難味は未だに忘れられない。私はチベットに居る中に多くの博士、学者、宗教者、隠者からしていろいろの説を聞いて利益を受けたけれども、この方から受けた程の感化は受けなかった。こういう尊い方があるから、その弟の大臣が過って悪いところへ陥っても、結局自分で真実に懺悔して未来の大安心を得ようということに勤めるようになったのであろうと私は察しました。また前大臣の奥さんである老尼僧も大臣に劣らぬ活発な気象だが、女ですから幾分か優しいところもあるけれども男優りの思想を持って居られたです。

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