[馬の耳に風]

MAKING APPEND NOTE
ダイエットお茶最新ランキング への返事
「兄様、兄様、もう起きまつしねえ。」
 翌くる朝下女がやつて来て、かう言つて平三を起しながら、早や蚊帳の吊手を外づしかけた。
「おい何するんだい、今から! 己が起きるまで寐かしといて呉れつて昨夜あんなに頼んで置いたぢやないか。」
 平三は無理に起されて腹立たしげに言つた。そして下女が蚊帳を外して了ふにも拘らず、彼は尚ほ起きようともせず、
「今日は日暮に家に帰るんだから、おかみさんにさう言つて邪魔でも寐かしといて呉れ。」とつけ足した。
「それでもあんた、家の人が遇ひに来とるぞね、それで起したのやわいね。」
「えゝ、家の者が※ 誰が?」と平三は半ば身を起した。
「阿母様が遇ひに来て御座るのや」と下女は手を休めて言つた。
「阿母さんが? どうして解つたのだらう。」
「今朝私が市へ買物に行つたら、来てござつたさかい、言うたわいね。」
「えーむ。そんなら早く言へばいゝに。」
 彼は気乗のしない風に言つて起きた。と部屋一ぱいにさし込んだ日光がクラ/\するほど眩しかつた。それを避ける様に床の間の方へ行つて、違棚の上に載せて置いた時計を見ると、もう十時過ぎであつた。
「今顔洗つて直ぐ行くから、一寸待つて居て言うて呉れ――お前余計なことを喋舌らねばよかつたのに――」

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