[馬の耳に風]

MAKING APPEND NOTE
Ryou への返事
 ひかえめに戸を叩く音がして、戸の間に泣き濡れたベッキイの顔が現れました。ベッキイは、さっきから泣きづめに泣きながら、前掛であまり眼をこすったものですから、すっかり顔が変っていました。
「お、お、お嬢様、ちょっと、あの、ちょっと入っちゃアいけませんか。」
 セエラは、ベッキイに笑ってみせようとしましたが、どうしても笑うことが出来ませんでした。が、ベッキイが心から悲しんでいるのを見ると、セエラは急に子供らしい顔になり、手をさしのべて、しくしく泣き出しました。
「ベッキイちゃん、いつか私あなたに、私達は同じような娘同士だといったことがあるでしょう。ね、嘘じゃアなかったでしょう? 二人の間には、もう身分の違いなんてないんですもの。私は、宮様でもなんでもなくなってしまったのよ。」
 ベッキイは駈けよって、セエラの手をとり、自分の胸におしあてました。ベッキイは欷歔きながら、セエラの傍に跪いていいました。
「お嬢様は、どんなことが起ったって、やっぱり宮様よ。何が起ったって、どうしたって、宮様以外のものにはなるもんですか。」

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